ずっとやってみたかった自転車韓国縦断。社会人になってあきらめていたものの、2025年の8月末、お盆を外して夏休みが取れそうだったのでチャレンジしてみました。
海外を自転車で走ってみたいけど、仕事の休みも限られている…。そんな社会人サイクリストにこそおすすめしたいのが、韓国の「Cross-country route」です。国土縦走自転車道: Google mapの自動翻訳だと国土宗主と訳されがち。
ソウルから釜山まで、全長約633km。 数字だけ見ると途方もない距離に思えますが、日本のどのサイクリングロードよりも走りやすい長距離ルートではないかと思います。
1日の走行距離70~80kmペース、全泊ホテル・モーテル利用で完走しました。備忘録として、経験を残しておきます。
1. 自転車韓国縦断をサポートする自転車専用道路
このページにたどり着いた人には釈迦に説法かもしれませんが、韓国縦断の最大の特徴は、コースの大部分が「自転車専用道」として整備されていることです。体感にして8-9割が自転車専用道になっていました。李明博大統領、ありがとう。


漢江(ハンガン)や洛東江(ナクトンガン)といった大河川の河川敷を利用しており、車道を走るストレスがほとんどありません。信号に止められることも少なく、舗装もきれい。かつての鉄道路線を転用したトンネルや、川にかかる巨大な自転車専用橋など、土木・インフラが好きな自分に刺さる内容も多くありました。
「車におびえなくていい」というだけで、旅の疲労度は格段に下がりますね。
2. 日程とペース配分:8泊9日
633kmをどう刻むか。3~4日で走り抜けている体育会系のライダーの記録もありましたが、このところ長距離を走っていなかったので走力に不安もありました。1日70~80kmを目安に、宿泊地を決めていきました。
| 日付 | 旅程 | 宿泊地 | 距離 | 備考 |
| 8/24(日) | 仁川→ソウル | ソウル市内 | 45km | 仁川まではAREXに自転車を持ち込み。 |
| 8/25(月) | ソウル→楊平郡 | 楊平郡のホテル | 83km | |
| 8/26(火) | 楊平郡→安城温泉 | 安城温泉 | 72km | |
| 8/27(水) | 安城温泉→聞慶 | 水安堡温泉 | 77km | 走り終えたのち、KTXで一駅輪行して宿へ。唯一の峠越え区間。 |
| 8/28(木) | 聞慶→尚州 | 地元の民宿 | 71km | KTXで一駅輪行してから出走。 |
| 8/29(金) | 尚州→大邱 | 大邱のゲストハウス | 91km | 走り終えたのち、地下鉄輪行。 |
| 8/30(土) | 大邱→昌寧郡 | ロードサイドのモーテル | 59km | 大邱市内観光後、地下鉄に自転車を持ち込み、前日のゴール地点に移動してからスタート。 |
| 8/31(日) | 昌寧郡→馬金山 | 馬金山温泉街のモーテル | 55km | 雨予報のため午前中には走り切れるルートを選択。 |
| 9/1(月) | 馬金山→プサン | プサンの空港付近の宿 | 97km | 100㎞近くになってしまった。宿は韓国縦断のゴール地点から15㎞。 |
3. 宿の心配は無用:当日予約ができる宿もたくさん
Google mapで「ホテル」を調べると、多くのモーテルが当日でも予約を取ることができます。モーテルは、ロードサイドによくあるタイプのホテルで、連れ込み宿という特性も併せ持っています。でも、韓国では出張者が泊まることもあるようで、日本とは毛色が違うみたいですね。モーテルはおしゃれなホテルではありませんが、サイクリストにとってこれほど使い勝手の良い宿泊施設はありません。
- 予約不要: 当日大抵空いています。とはいえ、前半は友人と2人旅だったので、前半の分は確保してから渡韓しました。
- 自転車フレンドリー: 多くのモーテルが、部屋直結の駐車場を完備しています。その駐車場に、自転車を置くことができます。
- 安い: 3000円前後が一般的でしょうか。馬金山の宿は2000円ちょっとでした。バスタブ付きの広い部屋に泊まれ、足をいたわることができるのは嬉しいポイント。
- 設備: ウォーターサーバー、PC、巨大テレビ完備。洗濯機があるところも多いらしいです(私が泊まったところには洗濯機はなかったので、洗剤は持参してじゃぶじゃぶ洗うのがおすすめです。
ただ、モーテルの性質上、オーナーと直接顔を合わせる機会があまりない設計になっているので、韓国語がしゃべれない私は少し困りました。本当にあっているのか…と疑問に思いながら階段を上ってオーナーらしき人に声をかけたり、入口に備え付けられていた電話で「ハロー」とあいさつして韓国語がしゃべれないことをアピールしてみたり…。

また、尚州ではサイクリスト向け民宿に飛び込みで泊まりました。Google mapの口コミが好評で、あらかじめ狙いを定めていた宿ですが、電話以外の予約手段がなさそうでドキドキしながら向かいました。電話が韓国語でできれば予約は取れそうです。日も傾きかけた17:00頃に着いたのですが、快く泊めてくれ、夕食も出していただけました。Nakdanbo bike houseというところです。

韓国料理大丈夫?と聞いてくれる優しさも。
4. 絶対やるべき「Cycling passport」
ただ走るだけだと飽きてしまいますが、韓国には「Cycling passport」というシステムがあります。 約20~30kmごとにイギリスの電話ボックスのような赤い「認証センター」が設置されており、そこでスタンプを押していくスタンプラリー形式になっています。

スタンプ帳は500円程度。全てのスタンプを集めて認定を受けると、認定証がもらえます。立派なメダルを買うこともできます。これはいいモチベーションになりました。ただ、認証センターはソウル・釜山とも市街地の中心からは離れているので要注意です(どちらも空港の近く)。釜山のセンターは月曜定休で、月曜までの休みを確保してからそれに気づいた私はもう1日休みを増やすことになりました。帰国日である火曜に、空港に自転車を預けてからバスで向かい、証明書とメダルをゲットしたのはここだけの話です。

ちなみに、大邱の少し南側から南旨(ナムジ)の間は、サイクリングロードはかなりアップダウンが激しい区間でもあり、スタンプスポットもないので私は一般道を通りました。
5. 実際の持ち物
- 自転車: 自分のロードバイクを輪行(飛行機)で持ち込みました。後述する段ボール輪行箱を、ソウルの宿からプサンの宿まで郵便で送っておいてもらいました。航空会社によって、自転車の預け入れが無料だったり有料だったりします。フルキャリアでも有料なところはあります。典型例としては、JALは有料なので注意しましょう。JALなどは縦+横+高さが203センチ以下であればよいのですが、普通の自転車でその幅に収めるのは至難の業です。私は大韓航空で飛びました。
- ナビ: Googleマップは韓国では自転車ルートの精度が低いので、私はNaver Mapをよく使っていました。Ride with GPSなどであらかじめルートを作っておくのがおすすめです。Kakao Mapをお勧めしているWebサイトもありました。
- 変換プラグ:韓国は日本のAタイプとは違います。CとSEの両方が混在しているようです。ただ、CとSEの違いはわずかですし、SEタイプはCにも刺さるので、SEを持っていくのがおすすめです。ちなみに韓国ではなかなか手に入らないので、出国前に買っていってくださいね。
6. 飛行機輪行について
始めての国際線輪行は、なんだかんだでかなり大変でした。私は、BTB 輪行箱 Basicを買っていきました。確かに1-2往復程度の強度ではありますが、問題なく往復とも輪行することができました。
一番困ったのは、組み立てた時のサイズです。輪行箱を組み立てた際のサイズが大きく、横幅が140cmくらいになります。新幹線のA~C席くらいの幅になります。成田エクスプレスなどの在来線特急だと通路にはみ出してしまう可能性もあるので、どうしても電車で輪行する必要がある場合は、普通列車の運転席真後ろのスペースに置くなどして、邪魔にならないように工夫するのは必須ですね。

空港に着いてしまえば、空港内はカートに箱を乗せることでスムーズに移動ができます。ちなみに、空港内では、140㎝の幅がエレベーターの乗り降りの障害になることはあまりありませんでした。空港の外でも、使ったすべてのエレベーターで長手方向に140㎝ある輪行箱は入りました。車いす+介護者くらいのサイズ感だと考えると、公共施設などでは基本的に問題ないのかもしれないですね。
買ってよかったもの
- ペダルレンチ:国際線輪行ではペダルを外すことが求められます。そもそも、ペダルを外さないと輪行箱Basicには収まりませんでした。
- グリース:一応買いました。ペダルをつけるときに、ねじ山に塗るためのものです。
- 輪行箱のためのキャスター:ダイソーで花台キャスターを買い、すずらんテープで輪行箱に括り付けて使用しました。花の鉢を移動しやすくするためのものですが、輪行箱のような底が平たいものとの相性はよいです。1つ220円で、20kg耐荷重です。輪行箱は細長くなる(140㎝くらい)ので、2つ用意して押しながら道を歩きました。買ってよかった、と一番思うものです。
出発前々日に、暑い中一度輪行箱に格納してみて、格納できることを確認してから空港に向かいました。BTBの輪行箱Basicは、箱自体をたたみ、140サイズに収納できることができるのが最大のメリットです。キャスターとペダルレンチを箱にいれ、ソウルの郵便局からプサンの宿まで輪行箱を宅急便で届けました。プサンの宿には、預かっておいてもらえるか、あらかじめ連絡を入れておきました。
そもそも、600kmを走るのが久しぶりだったので、タイヤを変えたり、長いこと変えていなかったブレーキ/シフターワイヤーを変えたり。家から空港までの間にSPDシューズの底がはがれてくるというアクシデントもあり、ソウルについてから慌てて接着剤を調達する羽目になりました。
7. 地下鉄/KTXでの輪行
ソウルや大邱、釜山などでは、土日には自転車をそのまま地下鉄に持ち込むことができます。空港鉄道のAREXも、持ち込みが可能です。使い分けると便利。

AREXは自転車を持ち込む際にWebサイトからの予約が必要でした。ただ、Webサイトの予約内容を確認されることはありませんでしたね。
KTXは、そのままの持ち込みはできないようです。ただ、輪行袋に入れた状態で持ち込むのは特に問題ないようでした。乗車した区間はかなり末端部分だったので、車端部の席を予約して席の後ろに自転車を置きました。
8. 食費は意外とかかる
補給食はコンビニ(セブンやGS25等)で手に入りますが、地方の区間(特に山間部)では補給ポイントが20km以上ないこともありました。真夏だったこともあり、水は1.5Lのものを買って500mlサイズのペットボトルに詰めていましたね。コンビニはソウル近郊を除き自転車道から離れているので、計画的に食料は調達するのがおすすめです。コンビニは、お店によっても価格が違ったりしました。日本みたいに、全店同一価格ではないみたいです。
スーパーも、自分が見つけられなかっただけかもしれませんが、思ったよりはないですね。GoogleやNaver Mapで「スーパー」と検索しても思ったようにはヒットしないので、直接チェーンの名前を入れて検索してみるのがおすすめです。iMartやハナロマート、Gマートなどに立ち寄った記憶があります。
基本的にはNaver Mapで探したお店に入っていました。日本円にして1000円以下で食べられる店はあまりないので、日本の旅よりもお金はかかります。1人で食べに来ることがあまり想定されていない店もたまにあります。それも特徴かもしれません。サムギョプサル・焼肉・鍋のお店などは2人以上を想定していましたね。チゲや麺類のお店は、気兼ねなく一人でも入れました。

スーパーのお弁当やカップ麵で済ませたのは2回くらいでしたかね。スーパーを物色しているときに果物を食べたくなったので、果物ナイフを買って梨やらリンゴやらを切って食べたりもしていました。ナイフは輪行箱に入れて日本に送り、そのまま今でも家で使っています。

幸い、お腹を壊すことはありませんでした。ただ、お腹を壊したというブログも見たので、胃腸薬と風邪薬は持っていくことを推奨します。
真夏だったので、塩分チャージタブレットも日本から持ち込みました。軽く探した限りでは見当たらなかったので、買っておいてよかったものの一つですね。
9. 英語はそんなに通じない
英語は通じないと聞いていました。大きな町でも、すごく通じるなーと思った経験はあまりありませんでした。「ありがとう(カムサハムニダ)」「これ1つください(イゴハナジュセヨ)」等の基本的な単語は使うしかないですね。
ただ、ハングルは作りがシンプル(母音部+子音部)なので、走っているときに看板に出てくる地名を練習問題がわりに覚えようとしてみると、意外と文字の発音がわかるようにはなります。それが力を発揮するのはレストランでメニューを渡されたとき。お店のメニューもたいてい韓国語のみで、それを翻訳アプリで日本語や英語に訳してもあまりよくわからず困りがちです。でも、ハングルの音がわかると、日本の韓国料理屋で聞いたことのある料理の名前が出てくるので(ビビンバ・チゲ・グクス・クッパ等々)意外と重宝しました。音をそのままWeb検索すると、日本語の説明記事も結構出てきます。まあ、もうこのご時世ではAIに写真を投げて「解説して」といってしまえば済みそうな気もしますが…。
10. いってよかった場所
楽しかった場所はいろいろとありますが、最高だったのは馬金山温泉にある温浴施設でした。日本と同じタイプの、全裸で入るスーパー銭湯です。湯上がりの休憩所では高校野球をやっており、皆さん見入っていました。12時くらいに入って、入ったり出たりを繰り返しながら16時くらいまでいたでしょうか。サウナもオンドルスペース(岩盤浴のような、あったかい床に寝転がって汗を書ける場所)もあり、浴槽も37℃~45℃くらいまで幅広くあるので、日本人にはとても合うと思います。
11. まとめ
韓国を自転車で縦断したときの記憶/記録をまとめました。詳細な旅行記を書く気力は今のところありませんが、韓国も田舎に行けば日本の田舎と見間違うような風景が広がっており、見知った景色だけど日本ではない、パラレルワールド感を味わうことができてとても楽しい日々でした。

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